[翻訳]テレンス・タオによる数学の学び方に関するアドバイス: "Ask yourself dumb questions – and answer them!"
バカな質問を自問し、それに答えよう
本で自習するにせよ講義を聴講するにせよ、数学を学ぶとき目にするのは、完成された結果だけです。それは、ぴかぴかに磨かれ、周到に考えられ、なおかつエレガントに表現されています。
しかし、数学で新しいことを発見するプロセスは、もっともっと泥臭いものです。勘違いしたり、実りのないことしたり、無意味なことやったりという試行錯誤の積み重ねです。
こういう「失敗した」試みはなかったことにしたいかもしれませんが、数学を深く理解するためにこれは絶対に必要なことなのです。このプロセスこそが、(とるべき選択肢を絞ってくれることで)最終的な正しい道へあなたを導いてくれるのですから。
なので、一般に正しいとされている道から外れた「バカな」質問をするのを恐れてはいけません。そういう質問に答えることが驚くべき結果を生むということもあるのですから。でも、ほとんどの場合は、正しいとされている元の道がなぜ正しかったのかということを確認することになるでしょう。それはそれでとても意義があります。
例えば、標準的な補題に対して、要請される仮定をひとつなくしてみたり、もっと強い主張にしてみたりといった変更をしたらどうなるのか問うてみましょう。方法Xで証明される簡単な主張を、代わりに方法Yを使って証明できるか問うてみましょう。方法Yを使った新しい証明は、元のにくらべてエレガントでないかもしれません。あるいは、そもそもまったく証明できないかもしれません。どちらにせよ、方法XとYそれぞれの強さの関係が明らかになって、非標準的な補題を証明しようとするときの指針となるでしょう。
講義を聴講する際、そこで話されている基本的な事柄を明確にするために、「バカな」しかし建設的な質問をするのもよいことです。(例:主張Xは主張Yを導くか、またその逆はどうか。講義で導入された専門用語が、似た響きを持つ他の用語と関係あるのかどうか、などなど。)もし質問をしなければ、そこから後の話についていけなくなってしまいます。講義をする人はたいていの場合、そういうフィードバックを歓迎し(聴衆のうち少なくとも一人は話を聞いていたんだって分かるからね)、あなたとその他の聴講者に対してよりよい説明をする機会が得られたとうれしく思うでしょう。ただし、話の流れとあまり関係ない質問であれば、講義の最後にするのがよいでしょう。
次の記事も参考にしてください。:"Learn the limitations of your tools", "Be sceptical of your own work".